水巡りの記

2016年6月16日 大神神社・率川神社 ~ささゆり奉献神事~

今回の行程(HOLUX ezTour for Loggerにて作図。)

先月、5月22日の大神神社でのお参りで、偶然、率川神社(いさがわじんじゃ)の三枝祭のポスターを眼にし、体調を崩しお参りに行けなくなった友人の代参もかねて、お参りに出かける。

率川神社の御祭神は媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)。狭井神社の御祭神、狭井大神の娘さんにあたる。狭井大神は、大神神社の御祭神、大物主大神の荒御魂とされる。つまり、三輪山の神様の荒御魂の娘さんが率川神社の神様ということになる。

率川神社の三枝祭(通称ゆりまつり)は、大神神社の鎮花祭(はなしずめのまつり)と並んで疫病を鎮めることを祈る祭である。媛蹈韛五十鈴姫命さんの生まれ育った三輪山の麓、狭井川のほとりにはささゆりが咲き誇っていたという故事から、ささゆりを独特の形の酒樽に入れて飾り、お祭が行われる。ささゆりは古名を「佐韋(さい)」と言ったことから、お祭りの名前もさいくさの花(ささゆりの花)をお供えするお祭りと言われたという(率川神社のwebサイトによる)。ということは、いつもお水を頂く狭井神社も、その漢字から水を汲む井戸に由来するお名前かと思ったが、むしろ「ゆり神社」の意味なのかも知れない。また、「さい」の名から、疫病や厄災を「さえぎる」に繋がることもあって、疫病除けの神様とされているとも聞く。

今回、三枝祭に参拝するに当たって、6/17の本祭にお参りすることも考えたが、それ以上に、本祭に先立って率川神社のふるさとである三輪山からささゆりをお届けするささゆり奉献神事に惹かれた。この神事自体が古いものなのかはわからないが、自分にとっての第一の鎮守である三輪山からささゆりをお届けするその道中に参列したいと思うと同時に、自分も一密教行者として狭井神社のお水をささゆりと共に率川神社にお届けし、友人の病気平癒を祈りたいと思った。

また、ささゆりを載せた花籠は三輪から奈良市内まで電車で移動するということで、その様子を見てみたいという気持ちもあった。そのため今回は、電車で移動することにした。京都駅から近鉄電車で大和西大寺経由で天理まで行き、天理でJR桜井線に乗り換え、三輪駅にて下車。大神神社・狭井神社にお参りし、ささゆりの花籠に同行してJRの電車に乗って三輪駅よりJR奈良駅に向かった。奈良駅前から花籠の行列に同行し、花籠は市内を一巡するので途中から行列から分かれて率川神社に先回りして参拝、昼食を取った後、花籠が到着する少し前に率川神社に戻り行列を待つことにする。

大神神社

朝6:00過ぎ京都出発。京都駅から近鉄にて天理へ、天理からJR桜井線にて大神神社・狭井神社最寄りの三輪駅へ。

(写真をクリックすると大きなサイズで表示します。)

しとしとと雨の降る中を参道を進むが、思ったより人影もまばら。


まず大神神社にお参り。お祭りのしつらえがされている。

境内のささゆり園に寄ってみる。花の時期にはまだ早いそうで、まだ数輪しか開花していない。今日奉献するささゆりはまた別の場所で育てているのだろう。ささゆりの花は初めてそれと知って見たが、薄ピンク色で可憐な花。

よく見ると、葉の形がその名の通り笹の葉のよう。昔は三輪山麓にはたくさんのささゆりが咲き誇っていたそうだが、近年は乱獲や環境の変化によって自生は難しくなっていて、大神神社を信仰する篤農家からなる「ささゆり奉仕団」が苦労の末、育成栽培ができるようになったとのこと。

続いて5分ほどで狭井神社に到着。狭井神社は除病の神様でもあり、友人の病気平癒を祈る。そしていつものように拝殿裏手の井戸で御神水を頂く。そして再び、「本日ささゆり奉献に同行し、密教行者としてお供(とも)して、娘神様にささゆりとお水をお届けします。」と狭井の神様に祈念する。観音さんもお水とご縁が深く、私は観音さんに仕える行者として、いつも観音さんの命の水を宇宙に巡らすことを考えている。三輪の神様は観音さん(十一面観音)としての側面もあり、三輪の神様・観音さんのお水を人々やあらゆる生き物に巡らすお手伝いができればと思う。

再び大神神社に戻る。9:30より拝殿にて奉献神事道中安全祈願祭。

続いて神前から駕籠に納められたささゆりが運び出される。




そして大神神社豊年講の人たちによって、奈良市内の率川神社まで運ばれてゆく。






三輪山から奈良市内までは20kmほどあり、三輪駅からJR桜井線に乗り込み、奈良に向かう。



電車の中に駕籠が乗っている様子はなかなかシュール。






JR奈良駅に着くとささゆりは駕籠から花車に移される。



駅前でお囃子や浴衣に菅笠の行列が加わり、市内を巡行する。





私は途中で行列から離れ、一足先に率川神社へ向かう。


率川神社は初めて訪れたが、カラッとして明るい印象の神社。境内は本祭前日ということもあってあまり人もおらず、約1時間後のささゆりの行列の到着を待っていた。

まず一足先に、率川神社の姫神様に「ご縁によりて本日ここにお参りさせて頂きます。」とご挨拶する。

到着までの間に近くで昼食をとる。

市内の観光案内所の「しかまろくん」。アニメ「おじゃるまる」に出てくるおこにこツインズの目に似ている。個人的にせんとくんより好感が持てる。全くの余談だが、せんとくんの作者の籔内佐斗司氏は高校時代から割と好きで、「犬も歩けば」(1990年)などのトボけた味わいが好きなのだが、最近の仏像然とした感じのものは個人的にあまり惹かれないなぁ。

12:20頃、市内を巡っていた花車の行列が到着。


花車からささゆりが降ろされ、



御神前へとお供えされる。

ささゆりを運んできた花車。



いよいよささゆり奉献奉告祭が執り行われる。

私も心の中で狭井神社からお持ちした御神水をお供えさせて頂く。そして本日、友人に代わってお参りさせて頂いたこと、大神神社・狭井神社にご縁を頂いている密教行者としてささゆりにお供(とも)させて頂いたこと、お父様(狭井大神)からお預かりしてきた御神水を併せてお供えさせて頂いたことをお伝えし、友人を始め、人々の病を癒して下さい、と御祈念する。

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