水巡りの記

高野山から立里荒神へ

2018年2月4日。立春。
朝は5時半頃に起床、6時過ぎより本堂にて朝の勤行。


勤行の後、精進の朝食を頂く。

朝食後しばらく師僧と会談、近況のご報告などの後、立里荒神へ向かう。


11時前、立里荒神到着。立里荒神は、仏法の護り神である三宝荒神を祀る。特にこの立里荒神は高野山と深いつながりがある。弘法大師が高野山を開くとき、嵐が続いて工事が全く進まなくなってしまった。そこで弘法大師が七日間参籠し三宝荒神を供養したところ、嵐が止み無事に工事を進めることができたという。おそらくは古来のこの土地の荒々しい山の神であり、筋を通さなければその強大な力を以て障碍をなすが、恭敬礼拝しきちんと筋を通せば手助けしてくれるということなのだろう。
このことは、どの場所で堂宇を建てあるいは修法を修す時にも、その土地の神様にご挨拶をし、筋を通し、その土地をお借りして修行させて頂くことに感謝し、所修の本尊のみならずその土地の神様も併せて敬うべしという教訓を我々密教行者に与えている。


なかなかに激しい雪。荒神岳もかすんで見える。


大峰山系方面を望むも、吹雪で全く見えない。


参道横、何か動物の足跡が。ウサギではなさそう。


積雪はさほどではないのだが吹雪が酷そうなので、今回は本殿まで登るのは断念し社務所前より遥拝する。 社務所にて荒神さんの古札をお納めし、新しい御神札を授かる。


立里から高野山に引き返す。高野山内も昨日の春の日差しとは打って変わって吹雪模様。 中の橋駐車場近くで昼食をとり、12時過ぎ、天野大社(丹生都比売神社)に向けて出発する。

高野山から天野大社へ


天野の里に入りもう少しで天野大社着くというところで、きらびやかな社殿が目に入る。これまで立ち寄ったことのない神社。カーナビを見ると八幡神社らしい。後で調べると、天野の地の産土神・氏神様らしい(和歌山県神社庁HPより)。明治年間に度々の台風で大きな被害を受けたが、断続的に修理を続け、本殿の彩色は昭和62年に修理されたとのこと。


正面から参拝ののち、社殿をすぐ近くから拝見する。彩色が美しい。立里や高野山の吹雪がうそのように日差しが温かい。


失礼して、玉垣の隙間から本殿を伺う。

これまで、天野の里は天野大社以外はゆっくり見て回ったことがなかったのだが、道端の道しるべを見ていると西行堂やなにがしの墓などいろいろ興味深いところがある。大円院とも関わりの深いの『滝口入道』の悲劇のヒロイン横笛ゆかりの恋塚も天野にあるはず。いつかゆっくり散策してみたい。


13:50頃、天野大社に到着。天野大社は丹生都比売神社とも呼ばれ、その名の通り御祭神は丹生都比売命大神(丹生明神)、併せて御子神の高野御子大神(狩場明神)、大食都比売大神(気比明神)、市杵島比売大神(厳島明神)を祀る。これら丹生・高野・気比・厳島の4柱の神様は高野山では四社明神とも呼ばれ、高野山の鎮守神として壇上伽藍の御社にもお祀りされている。
弘法大師が密教の修行の根本道場の地を求めていたところ、黒白(こくびゃく)二頭の犬を連れ猟師の姿をした狩場明神と出会い、現在の高野山に導かれたといわれている。高野山一帯は丹生明神の神領で、弘法大師はこの地を丹生明神より賜り、真言密教の一大道場を築いたとされる。以来、高野山では丹生・高野両大明神は高野山の地主の神様、修行者らを護り導く神様として大切にお祀りされているのである。
私も、高野山に登った時には極力天野にもお参りするように心がけている。去年の星供明けのお参りに続き、今年も天野にもお参りする。


春の光射す本殿。


ご神犬「すずひめ号」。昨年暮れ、高野山開創1200年にちなみ、篤志家より紀州犬の御神犬が神社に奉献されたらしい。今年は戌年でもあることから、毎月16日に斎行される月次祭の後には「すずひめ号」がご神前に参拝し、一定時間公開するとのこと(公式HP内「お知らせ」より)。なかなか可愛い。いつか直接お目にかかりたいものだ。

大神神社


16時過ぎ、大神神社に到着。御祭神は大物主大神。個人的に、自分自身の鎮守神と思っている神社である。節分・立春を中心とするこの3日間のお参りの最後をここ大神神社で締めくくる。


拝殿よりお参り。拝殿向かって右手の丘を望む。


立春らしい温かい日差し。午前中の高野山と立里荒神の吹雪がまるで別世界のことのように感じられる。


祈祷殿の前を過ぎ、「くすり道」を経て摂社狭井神社に向かう。


狭井神社に向かう参道。この右手に大物主大神を手助けした少彦名神が祀られている。


狭井神社に参拝。御祭神は三輪山の神様・大物主大神の荒魂。拝殿裏手の「薬井戸」で御神水を頂く。


境内の池の上に祀られる市杵島姫命。


夕日を浴びて輝いている。


夕日射す若宮社・旧大御輪寺の観音堂。観音さんのお体は今は聖林寺に遷られたが、観音さんの心はまだここにおられるような気がする。


3日間のお参りの最後、三輪山に別れを告げる。

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