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正月祈祷の助法を終えて

(『由加山だより:蓮の台』, 第129号, 由加山蓮台寺発行, 平成26年3月. に寄稿)

由加山蓮台寺での正月祈祷の助法も、振り返れば二〇〇九年以来今年ではや六回目となりました。この間、ご祈祷に職衆として出仕させて頂くほか、真王殿や年によっては権現堂での護摩供も修させて頂きました。

私は元は在家の出身なのですが、中学・高校時代より仏教思想に興味を持ち始め、大学ではインド哲学を専攻しました。仏教も含め、インド哲学諸派の西洋哲学との大きな違いは、単に頭の中での思弁だけではなく、その基礎に瑜伽行(ゆがぎょう、つまりヨーガの行法)と呼ばれる身体技法があり、その行法を修し、自身の認識論の枠組みを拡張することによって、普段の状態では認識し得ない「宇宙の本質」を直接的に知覚しようとすることにあります。大学での研究のみならず、実際に自分自身の体を使って、この行法を修したいという気持ちを抑えられず、高野山で得度したのは二〇〇五年のことでした。その後ご縁あって蓮台寺にてお正月とお盆のお手伝いをさせて頂いております。

この蓮台寺で行っている御祈祷も、また真王殿で毎月修されている護摩供も、その元は、インドで発展したこの瑜伽行が中国を経て日本へと伝えられたものです。その最終目的は、「宇宙の本質」すなわち「仏」との合一にあります。けれども、我々がそのゴールにたどり着くには、おそらく一生でも足りないくらいの長い時間をかけた修行が必要なのかも知れません。けれども、仏の元に少しでも近づき、その本質をほんの僅かでも垣間見るために、私たち密教僧は、日々修行を続けています。

由加山の名の元はこの「瑜伽行」にあると聞きます。おそらくこの地は、蓮台寺の創建以前より行者たちが瑜伽行を修し、またもしかしたら有史以前より祭祀などが行われた特別の地だったのかも知れません。この特別な地で、連日行法を修させて頂くご縁を頂いたことは、誠に僥倖であったと思わずにはいられません。

一密教行者として微力ながら仏に向かい合い、「仏の力」とこの由加山という「場の力」とによって、由加山蓮台寺の参拝者・檀家の皆様の御祈願が成就せんことを心から願うものであります。