瀧山と水の信仰

2021年11月29日 瀧山お浄め祈祷

端緒

新型コロナウイルスの世界的感染拡大から2年が経とうとしていますが、 いまだにその勢いが収まる気配は見られません。この新型コロナ禍により、 世界中の人々が生活の在り方を根本的に見直さざるを得なくなってきています。 けれどもそれは一面的に悪いことではなく、これまでのやり方が通用しないという 一つの危機的状況に際して、これまでの自らの生活の在り様・生き方を問い直す 絶好の機会でもあります。

この大きな転換期に際し眼には見えない次元に流れる「水脈」を整えるべき時であるという 示唆を感じとり、当庵でも本尊多羅菩薩の修法を初め法界(物理的次元のみならず全ての次元を含めた 宇宙全体)の「水脈」を浄め繋ぎ直す様々な修法や霊地への参拝を重ねております。

そうした中で、今日本の丑寅(うしとら)=北東=鬼門=聖なる方角を整え、 お浄めする必要性が庵主の元にも示されて参りました。日本の丑寅に当るのは東北地方および北海道。 庵主の故郷でもある東北地方でも、様々な人々がそれぞれの立ち位置から霊地を再整備をしているという 話を聞きます。庵主にとっての東北における窓口は蔵王連峰の瀧山、 とりわけ瀧山山麓にある清水観音前の清水(しょうず)です。

そこでこの度、瀧山より「お浄めの修法を」修すため、瀧山山麓に位置する清水観音前の清水 にて瀧山本地十一面観音、善如龍王、諸龍ならびに水神を勧請し、 法界の水脈を整え東北・日本・ひいては法界全体の浄化を祈る修法を厳修することに致しました。

現地下見および清掃

2021年11月27日早朝に京都の自坊を出発、途中新潟県内にて1泊し28日昼頃に山形市内到着しました。 早速西蔵王高原、瀧山山麓の現地の様子を確認しに向います。
(各写真をクリックするとより大きな写真が表示されます。)


清水観音のお堂は2016年の地滑りにより倒壊寸前のダメージを受け、本尊の観音像は お堂を管理する土坂地区に移されました。そのためこの地に参拝に来る人もないようで、 観音堂に向う山道の入口も草が生い茂っています。 このまま入れるだろうかと思案していると、すぐ近くをイノシシの親子が走り抜けていきました! びっくりするも、とにかく観音堂前の清水の様子を確認するために鳥居をくぐり山道を進むことにしました。


観音堂までは5~10分ほどの道のりですが、途中何ヶ所か倒木が山道に倒れ込んでいましたが、 またいだりくぐったりすれば通れないことはありません。なんとか観音堂前に到着すると、 観音堂は本尊は救い出されてはいるものの、 地滑りの土で沢への斜面に押し出されて傾いた状態のままになっていました。 重機が入れるような場所でもないので、地元の方も対応に苦慮しておられるのでしょう。 観音堂前の清水周りも落葉などで荒れておりました。


けれども清水上に祀られた宝塔も以前のままで、水も豊かです。 よくよく見ていると荒れているというよりは良い感じに自然の中に溶け込み、 自然の中に戻って行っているようにも見えます。 下手にたくさんの人が立ち入るよりは、来るべき人のみが来る状態も悪くないのかも知れません。 当初は現地確認だけのつもりでしたが、急遽明日の修法に供え周囲をお清掃します。


一通り清掃が済み、ちょっと明るくなったようです。取り急ぎご挨拶のお参りをします。 夕日も射してきました。観音さん、龍神さん、水神さんも喜んでおられるようです。


清掃終わってテレビ塔方面に向い瀧山を遥拝します。美しい夕映えです。 お山も明日の修法を楽しみにしているように感じられます。

水神お浄め祈祷

11月29日朝9時、本日の修法の立会人をお願いした友人のT氏に迎えを頼み実家を出発。 今回の修法の地、瀧山山麓の清水観音前の清水に向い、 20分ほどで観音堂への山道の入口の駐車場に到着します。 ここから清水へはさらに山道を10分ほど歩きます。 清水への山道は草が茂り倒木も何本かあり、その中を法衣姿で進みますが、 不思議なほどすいすいと足が進みます。


9時半過ぎ清水観音前の清水に到着し、清水の宝前に洗米とお水をお供えします。


 荘厳が整い、修法を始めます。 まず善如龍王と諸龍・水神を勧請して、龍供を厳修。 続けて龍神・水神に加え瀧山の本地仏である十一面観音に向け、 理趣経の読誦を中心とする理趣三昧法会を厳修します。十一面観音は水と浄化を司るの仏様です。

なお瀧山の本地は一説には薬師如来とも言われますが、 庵主は瀧山に聖なる水を司る十一面観音の側面を見いだしています。


40分ほどで修法が終わります。立会人であるT氏によると、途中読経の声に 呼応して沢の水の音が高まり、その瞬間清水横の木から雪がドサドサッと落ちてきたとのこと。 修法している本人は雪が落ちてきたことには気がつきましたが、台風の目の中にいるのと 同じで沢の水の音の変化には気づきませんでした。ともあれ、 龍神さん・水神さん・十一面観音さんもお喜びの様子、自分も嬉しく有り難く思います。


修法を終えて清水は明るさが増しているようです。 改めてしばしお参りし周囲の空気を味わいます。


しばし余韻を味わいぼちぼち帰ろうとしますが、水神さんと十一面さんが名残惜しく、 なかなか立ち去ることができません。来る時とは打って変わってトボトボと山道を下っていると、 T氏が笑っています。神様も私もどちらも別れ難(がた)そうにしているのが可愛らしいと。 まるで逢瀬を見られたような気恥ずかしい気持ちになりました。

ともあれ、この東北の地、山形の地、蔵王の十一面観音の地にてお浄めの修法ができたことは 誠に幸いなことでした。この清水の清らかな水が、日本中、世界中、 そして法界全体へと流れていくことを改めてお祈りします。


最後に西蔵王牧場付近から瀧山山頂を遥拝し、山麓を後にします。

結び

日本の聖なる方向に位置する東北の地にてお浄めの修法を修す今回の試み、 微力ながら、蔵王山麓・瀧山の懐にて龍神・水神・十一面観音を通じて確かに仏の世界の聖なる水を 法界に巡らすことができたように思われます。

コロナ禍自体はまだしばらく続くものと思いますが、この機会を好機として生かして行けるかどうかは 人間の智の力にかかっているかと思います。 聖なる水の働きによって禍(わざわい)を福に転じ新たな次元へと進んで行けるよう、改めて祈念致します。

最後に、年末近い多忙な時期にこの修法の立会人を快く引き受けて下さった、 友人のT氏に心よりお礼申し上げます。

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